話題の映画

2008年4月 5日 (土)

映画「靖国」

先日、話題の映画「靖国」を観てきました。
運よく最後のマスコミ試写会に参加することができたのです。
感想としては、
とても面白かった、ぜひ、みなに観てもらい、語り合ってもらいたい

ーそう思いました。

しかし、4月12日から公開を予定していた映画館5館が全て、直前になって上映取り止めを決定し、一時的に、この映画を観るチャンスは、奪われるという状態に陥りました。
これは、日本の映画界では極めて異例なことです。

幸い、各種メディアで大きな問題として取り上げられているので、皆さんも見聞きされていると思います。簡単に振り返ると。。。

昨年末に、一部の週刊誌が、この映画を「反日的」だと非難し、この作品に文化庁からの助成金が750万円出ていることに疑問を呈したのが発端です。
しかし、それだけで一本の映画の上映が自主規制されることは普通ありません。
ことが大きくなったのは、3月に入ってからのこと。
自民党の稲田朋美議員が試写を求め、それに対して宣伝のアルゴ・ピクチャーズが「検閲のような試写には応じない」と返し、結果的に、3月12日、全ての国会議員対象の国会試写会が行われました。
その後、右翼が上映館に対して嫌がらせなどを行い、右翼の妨害を受けた(或いは妨害を危惧した)上映館が、上映中止を決めたものです。

「自主規制」には、背景があるものです。
国会議員が映画の内容を、文化庁の助成に相応しいかどうかを検討するために「国政調査権」を用いたという行為の結果が、自主規制につながったのは事実です。
これは、事実上の「権力を用いた表現の自由の侵害」と言えると、私は思います。

今回の自主規制は、観る権利・観せる権利を奪っただけではありません。

私が映画制作会社で仕事をした経験から言うと、一本の映画を完成させるためには、-作り方にもよりますが-、ドキュメンタリーならば数千万円(劇映画なら億単位)の制作費がかかるのは普通です。そして、それを宣伝・上映していくには更に数百万がかかります。
多くの場合、それらは借金によってまかなわれます。
作品の質が高ければ映画祭で受賞して賞金を得たり、助成金に申請して価値が認められる場合もあります。しかし、それでも資金の大半は、上映して多くの人に観てもらうことによって回収されるのです。
そうやって、力のある制作者は作品を作り続けることができるのです。

つまり、今回の「靖国」のように、上映の機会を不当に奪われることは、制作者にとって死活問題であり、今後の制作の道を閉ざされることにも繋がり兼ねないのです。

このことも、事実上「表現の自由を奪われる」ことに他なりません。

幸い、新聞やテレビで、今回の問題が大きく取り上げられ、市民レベルでも上映継続を求める声が高まって、今朝の新聞では全国21館の映画館で上映が決まったそうです。この国もまだまだ捨てたものではないようです。

しかし、その一方で、製作者側には、嫌がらせの電話などがますます増えていると聞いています。
私たちにとって、この映画を守りきれるかどうかが、一つの岐路になるのかもしれません。

さて、後回しになってしまいましたが、この作品を観た感想。
「靖国」というタイトルが少々刺激的で「反日的」という評判が一人歩きしたように感じます。

保守派の人々にこそ、ちゃんと観てもらいたい。
靖国を訪れる様々な人々の、様々な声を丹念に拾っており、ナレーションによる方向付けの一切ない、限りなく「中立的」なその制作姿勢に、私は正直なところ違和感さえ覚えました。

軍服を着て、真剣な表情で参拝をする男性。靖国に祀られた兄が戦死したときの思い出を語る中年女性たち。小泉首相の参拝を支持するアメリカ人と、彼を取り巻く様々な声。
そして、「靖国に閉じ込められた」遺族の魂を取り返しに来た台湾の人たち。
また、ある住職は、大切な家族を奪われたことへの怒りを、「靖国が封じ込めている」と語ります。
靖国を巡る様々な喧騒が映し出される一方、
カメラは、靖国の「ご神体」といえる靖国刀の美しさと、刀匠の沈黙を映し出します。

私が感じた違和感は、様々な対象に柔らかな眼差し(カメラ)を向ける監督の立ち位置が、見えにくいことに他なりません。

しかし、ラストでようやく、監督がどういう思いでこの作品を手がけたのかが明らかにされます。
「靖国」の象徴ともいえる日本刀が、いったい何を見てきたのか。

それは、私たち日本人一人ひとりへの、問いかけのように感じられました。

観る者に、考えさせる、そして語り合う場となりうる映画「靖国」を、多くの人が観ることができることを願っています。

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